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DSAT災害洗濯支援チーム インタビュー(後編)

2024年の元旦に、令和6年能登半島地震が発生しました。この地震をきっかけに、洗濯とクリーニングで被災地をサポートする「DSAT(ディーサット)災害洗濯支援チーム」は誕生しました。DSATとは、Disaster Sentaku Assistance Teamの略称です。全国各地のクリーニング師が連携を取り、断水などで思うように洗濯ができない被災地で衣類を預かって、受け入れ先の店舗で洗濯・クリーニングを依頼し、再び持ち主に返すという、日本で前例のない取り組みです。
 
今回は、代表の中村祐一さんに支援活動の合間をぬってお話をうかがいました。
DSATの立ち上げ経緯や、活動の根底にある想いを前編・後編に分けてお届けします。


記事の前編はこちら


ぬいぐるみもウェディングドレスも、洗ってほしいものは何でも洗う!

—— 活動を続けるなかで「これは想定外だった」と思うことはありますか?

中村さん:もう、そういうのだらけというか…(笑)なにしろ0→1の活動ばかりなので、苦労は尽きません。「後方支援」と言いながら、今でも自分たちが各地を駆けずりまわっていますし

断水の影響で洗えずにいたご家族の元へ

中村さん:最初に訪れた避難所で、おじいちゃんからセーターのクリーニングを頼まれたのも想定外でしたね。今ではクリーニングも受け入れているのですが、当初はあくまで普段の洗濯の代行を、と考えていて、クリーニングは想定していなかったんです。すみませんとお断りしたら「なんだよ、セーター洗ってくれねぇのか」とがっかりされて…(笑)
 
でもそのときに、自分たちが甘かったなと気づかされました。
たとえ避難所であっても、そこではもうみなさんの暮らしが始まっているんですよね。だから当然、普段の暮らしに必要なものは全てニーズがある。すぐにメンバーと話し合い、「洗ってほしいものはぜんぶ受ける」と方針転換しました。

避難所で洗濯物を預かっている様子

—— おじいちゃんのセーターはその後どうなったのですか?
 
中村さん:翌週また会いに行って、おじいちゃんのセーターも預かることができました。
 
その後、靴、ぬいぐるみ、国旗、ウェディングドレス…。特に着物は土地柄持っている方も多くて、もう100枚近く洗ってもらったと思います。それこそ“暮らし”に必要なあらゆるものを、協力してくれたクリーニング店さん達に洗ってもらいました。「クリーニング屋の本気を見せてやる!」と言って、難しいアイテムを引き受けてくれたクリーニング屋さんもいました。

今回連係を取ったクリーニング店の皆さん



衣生活への意識の変化が「より良い暮らし」にもつながると信じて

—— 今後の支援活動について、みなさんで話し合っていることはありますか?
 
中村さん:災害時の洗濯支援チームはやっぱり残しておいたほうがいいと思うので、正式な組織化に向けても動いています。被災地を巡っていても感じるのは、衣食住の「食」と「住」に比べて、「衣」への意識っていうのはそんなに高くない、ということ。「服を着る」ということの大切さについてももっと伝えていきたいね、といつもメンバー内では言っています。
 
平時でも災害時でも、自分が持っている服を洗って、きれいにして着続けるということが、もっとあたりまえに重視される世の中になればと願っています。
 
DSATを立ち上げたメンバーとは、もともと洗濯講座などを一緒にやっていて、「洗濯の教科書を出そう!」と話しているんですよ。
 
災害に備える意味でも、普段の衣生活そのものに対する意識を上げておくことが重要だと思っています。
 
「洗濯教育」というとちょっと大げさですけど、メディアやSNS等での発信や洗濯講座、講演や企業での研修などなど、さまざまな形で、少しずつ伝えていけたらと思っています。

洗濯講座の様子



服を着ることを改めて考える

—— 「洗濯教育」の根底にはどのような想いがあるのでしょうか。

中村さん何のために服を着るのか?なぜその服を着るのか??
それを考えたとき、洗濯の仕方が変わります。すると、服の選び方だったり、服の着方だったり、そういうところまで、すべて変わっていきます。そうすると、それに紐づくように洋服の大量廃棄のような大きな社会課題にまで変化を起こせると考えています

洗濯やクリーニングって、服を着るすべての人が対象になるから、1人ひとりの衣服への意識を変えていけばとても大きなインパクトになると思うんですよね。

「洗う」ことで、人々の「より良い暮らし」を支えたい。そのために、平時でも災害時でも衣生活に関するさまざまな提案を、プロとして続けて行く必要があると思っています。



編集後記

避難所での暮らしを余儀なくされても、いつも着ていた服をきれいに洗ってまた着ることで、ささやかな“日常”を取り戻すことができる。「プロの洗濯支援」という、今までにない災害支援を立ち上げたDSATさんのお話を聞きながら、あらためて「衣食住」の「衣」の大切さに気付かされました。
洗濯物を預かる人、洗う人、そして寄付などでサポートする人、多くの人のあたたかい支援で成り立っているこの活動を、1人でも多くの方に知ってもらえたらと思います。


※花王の「アタック」はDSAT災害洗濯支援チームの活動を支援しています。


◆DSAT災害洗濯支援チームHP

 
◆DSAT中村さんのインタビュー(前編)はこちら




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