大手ゼネコンの大林組さんが「職場のロリエ」にかける想いに迫る!
生理用ナプキンを備品化するプロジェクト「職場のロリエ」。2022年からスタートし、導入企業はすでに280社(2024年11月時点)に達します。「生理がきても、安心して働けるように」との想いに賛同する輪は、男性比率が高い(イメージの)業界にも広がり始めました。
今回は、大手建設会社・大林組のダイバーシティ&インクルージョン推進部、中沢さんと町田さんを直撃。「職場のロリエ」を担当する花王の田村も加わり、ナプキン備品化に込めた熱い想いを存分に語っていただきました。
「売店でナプキンを販売して!」社員の要望で備品化に向け動き出す
——大林組さんは、今年の5月から、東京都港区の本社や支店、事務作業をする工事事務所のトイレのほか、建設現場の仮設トイレに、「職場のロリエ」を導入してくださいました。何がきっかけだったのですか?
町田さん:社員から「売店でナプキンを販売してほしい」という声が届いたことがきっかけでした。実は花王さんにお問い合わせする1年くらい前から、ナプキンの備品化の必要性を感じ始めてはいたんです。
中沢さん:きっと快諾してもらえるだろうと、軽い気持ちでさっそく売店にかけあいました。ところが、さまざまな事情で思いのほか難航してしまって…。管轄する部署にも熱心に働きかけましたが、なかなかOKが出ませんでした。
町田さん:ただ、その一方で、トイレに置くのはかまわないと言われていたので、「だったら、備品化しよう!」と思い立ったんです。当時は「売ってもらえないなら、置きたい!」と、私たち、どこか意固地になっていたかもしれません(笑)。
——それで、ナプキンの備品化に向けて進み始めたのですね。
町田さん:はい。ですが、いざ備品化するとなると、ナプキンの購入先や、購入の頻度・枚数はどうすればいいのか。補充は誰にしてもらえばいいのか。運用面での課題が山積みでした。サポートしてくれそうないくつかの会社にお問い合わせしたことも。ただ、どれも私たちが希望する条件に合わなくて。
中沢さん:「職場のロリエ」は、無償で提供されるプラスチックのボックスにナプキンを入れて、“ポンッと置くだけでいい”という手軽さが魅力でした。工事などが不要なので、建設現場の仮設トイレにも気軽に置くことができます。
テスト設置で見えてきた、運用面の課題や社員の反応
——最初のお問い合わせは、2023年の11月、「職場のロリエ」のホームページからでした。その後、花王の営業担当が訪問してお話をうかがい、テスト導入を経て、本導入になりましたね。
中沢さん:予想されるナプキンの必要枚数を算出してくださるなど、花王さんから運用イメージをお示しいただいたことで、それまでの悩みが一気に解消しました。具体的にイメージできるようになったことで、私たちのほうでも、「本社の補充は特例子会社にまかせ、建設現場の補充は、そこで働く女性にやってもらおう」というように次々とアイデアが浮かぶようになり、そこからは早かったです。
町田さん:実際にうまく回るかまずはテスト導入したいと花王さんにご相談したときも、すぐに実施してくださいました。本社だけでなく、建設現場でも足並みをそろえて1カ月間。テスト導入を終えた後は、アンケートを集計し、分析結果も出してくださいました。
——アンケートでは、どんな声が上がったのですか?
田村:9割以上の方から「継続してほしい」と、賛同の声が上がっていましたよね。
町田さん:印象的だったのは、「安心して働けるようになった」という意見が多かったことです。たとえば建設現場は、事務所と場所が離れていることが多いのですが、建設現場で働く女性から、「現場のトイレにナプキンがあれば、事務所のロッカーまで取りに戻らなくていい」「急な生理がきても安心」という声が上がったのはうれしかったです。本社勤務の女性からも、「生理の不安が解消されて、仕事に集中できるようになった」「各フロアに導入されたら、会議の間の休憩時間が短いときや、違うフロアにいるときに助かると思う」など、好意的な声が多く寄せられました。
中沢さん:結果がそろえば、社内稟議をとおすのは比較的簡単でしたね。本導入まで、しっかり伴走していただけたと感じました。
「職場のロリエ」をきっかけに“トイレの安心”に気を配るムーブメント発生
——本導入してからの反響はどうでしょうか?
町田さん:私、トイレでよく感謝されるんですよ。「導入してくれて、うれしい。ありがとうございます」って(笑)。建設現場でも、ナプキンの補充をとおして、新たなコミュニケーションが生まれていると聞きます。
中沢さん:男性からの反響も大きいですよね。「職場のロリエ」の導入をきっかけに、女性が安心して使えるトイレについて考えてくれる建設現場の男性が増えた印象です。現場に一人でも女性がいれば女性専用の個室をつくったり、女性社員の意見を聞いてトイレの配置や動線を考えてくれたり、鍵のセキュリティまで配慮する。また、そのことを会社として評価する。そんなムーブメントが、今、大林組で起きています。
建設業界の同業他社ほか、男性比率が高い業界にも動きが拡散
——国の調査によると、2023年(令和5年)の建設業における女性技術者の割合は7.9%ほどですが、大林組様にいたっては11.1%と大きくリードしています。御社の取り組みは業界で注目されていると思いますが、今回の「職場のロリエ」の導入についても、何か反響はありましたか?
町田さん:「けんせつ小町」といって、建設業で働くすべての女性が安心して働ける環境づくりをめざす日本建設業連合会の取り組みがあります。その会合で「職場のロリエ」についてお話ししたら、同業他社さんもかなり関心をお持ちでした。
田村:大林組さんの横のつながりで、すでに建設業から2社のお問い合わせをいただいています。また、大林組さんの「職場のロリエ」の導入が、少し前にメディアで取り上げられたことを受け、新たに4社のお問い合わせが入りました。
——その新たなお問い合わせは、どんな企業様からですか?
田村:女性活躍や健康経営に課題意識を持っている企業様が多いですね。大林組さんの導入は、「男性比率が高い業界でもやれるんじゃないか」「うちも一歩踏み出してみよう」とお考えいただける好例になっています。
中沢さん:「職場のロリエ」には、運用の形に“縛りがない”のもいいですよね。企業や現場ごとにアレンジすることもできるので、その点も導入しやすいポイントでした。
田村:ありがとうございます。私も、運用の自由度の高さが、「職場のロリエ」の魅力のひとつだと思っています。洗面台への設置を基本としつつも、職場事情に合わせて自由にアレンジすることが可能です。
大林組さんの例でいうと、本社ではトイレの洗面台にナプキンのボックスを置いていますが、建設現場ではトイレの個室に置いていますね。
「ナプキンの備品化が当たり前」の風土づくりをめざして
——今後、大林組さんとしては、「職場のロリエ」をどのように展開してきたいとお考えでしょうか?
町田さん:「トイレにナプキンが置いてあるのは当たり前」という風土を醸成できるといいですよね。大林組だけでなく、現場を含めた建設業全体が、働きやすい場所になってほしい。それが、私たちの切なる願いです。
——最後に、導入を検討している企業様に向けて、メッセージをお願いします!
中沢さん:私たちだけでは、ナプキン備品化の導入まで至らなかったと思います。豊富な事例をもとに、花王さんからしていただいたアドバイスが本当に役立ったし、「他社さんでうまくいっているのだから、私たちもできるはず!」と、勇気がわいてきました。最後まで伴走してくださり、心から感謝しています。
町田さん:「花王さんを信じて、やってよかった」。そのひと言に尽きますよね。
田村:ありがたいお言葉を頂戴しとても光栄です。私たちは、「職場のロリエ」を導入していただいてからが”誰もが働きやすい職場環境づくり”への本当のスタートだと考えています。これからもお困りごとに寄り添い、「トイレにナプキンが置いてあるのは当たり前」という風土の醸成や、誰もが働きやすい職場環境づくりにお役立ちできるよう、啓発ツールをご提供するなどして、伴走させていただきたいです。
編集後記
建設業界でいち早く導入していただいた大林組さん。同様のサービスも複数検討された中で「職場のロリエ」に決めたというお話をうかがい、私もうれしくなりました。どのように社内を説得するのか、そして導入後にどう運用するのか。企業にとって一番問題になる部分だと思います。検討中の企業の方にとっても参考になるお話をありがとうございました。
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