ラグジュアリーとサステナビリティの両立に挑戦したアイシャドウ「ブライトフューチャーボックス」誕生までの軌跡
こちらのまばゆい光を放つ素敵なアイシャドウ。実は容器のすべてのパーツが「紙」で作られているのです!
まぶた全体が宝石のように輝く、パールをたっぷり配合したアイシャドウを作りたい!自然由来のモノマテリアル※の化粧品容器を作りたい! 新しくて「KANEBO」らしい商品を作りたい!3人の想いが重なり、未知なる挑戦がスタートしました。
今回は、このチャレンジに挑んだメイクアップ研究所の佐々木ひとみ研究員、包装技術研究所の石井理恵研究員、そして「KANEBO」商品開発担当の伊藤永味子を取材しました。
※単一素材でできているパッケージのこと。ここでは紙を示す
「宝石のようにまぶたが輝くアイシャドウ」✖「自然素材の紙だけでできたパッケージ」
——それぞれの想いが重なったきっかけを教えてください。
メイクアップ研究員 佐々木: “輝き”にこだわりを持った先輩研究員が開発されていたアイシャドウが本当に美しくて…。私もいつか、まぶた全体がまるで宝石のように輝く、パールをたっぷり使ったアイシャドウをつくってみたい!と思っていました。
包装技術研究員 石井:私は「自然の素材だけで容器がつくれないかな」と思っていました。金属やガラス、紙の中でも、卵パックや家電の輸送などに使われている紙の緩衝材“パルプモウルド”に着目しました。エッジの美しさを際立たせるVカット箱の技術を組み合わせることで、上質感のある設計ができるのではないかと。
商品開発担当 伊藤:ちょうど「KANEBO」でも、環境配慮を意識した素材や容器を活用した新しい商品を作りたいと考えていて、「紙」も候補にありました。やりたいことを自由に話せる環境、それを聞いてくれる仲間がいたおかげで、部署を超えたプロジェクトを進めることができました。その中で、偶然にも佐々木さんや石井さんとの出会いが重なり、「それぞれの想いを掛け合わせて商品をつくってみたらどうだろう⁈」と発展しました。
品質、生産、美しさ。あらゆる場面で課題が立ちはだかっていた
——今までにない挑戦で、たくさんの困難があったと伺っています。どのような苦労をされたのでしょうか。
石井(包装技術):紙のみで容器を作った実績がなかったので、初めは品質面・生産面で心配の声もありました。特にアイシャドウを充填する一次容器の紙皿は初挑戦でした。プラスチック容器と同様の品質にするために、素材の選定や形状・寸法を調整し、試作を繰り返しました。課題を提示される度に、データなどを示しながら確認し合い、ひとつひとつ解消していきました。
佐々木(メイク研):柔軟性や通気性のある紙素材の皿にアイシャドウを充填する知見や実績がなかったので、従来の製品と同等の品質まで高めることが難しかったです。何度も試作を重ね、通常の商品開発の10倍くらいの労力をかけました。
伊藤(商品開発):プレステージブランドで発売するので、紙のみの容器で作るチャレンジにとどまらず、品質の良さや美しさ、ときめき感を兼ねそろえた、感動していただけるような商品にしたいと思い、容器の素材から、デザイン、中身のアイシャドウもこれまでにない感触・仕上がりになるように、妥協せずにこだわりました。
紙皿への充填と、輝き・感触の良さも叶えた新処方
——どのように心配の声を払拭したのですか。
伊藤(商品開発):最初はメンバーの中でも熱量に差がありました。でも、部署を越えて積極的にコミュニケーションをとることで仲間意識が芽生え、実現に向けて動き出してくれました。課題をあきらめるよりも、どうしたらできるかを考えて、チーム一丸となりスクラムを組んで進行できました。
——技術的な突破口は何だったのでしょうか。
佐々木(メイク研):トライ&エラーを繰り返し、紙皿に充填することも、極限までパールを配合したアイシャドウにすることも叶える新技術「トリプレットブリリアント処方」にたどり着いたんです。まず「高密着ジェル成分」を配合し、肌への密着性が高い処方を組んだことで、紙皿にアイシャドウが密着。さらに、パールの配合量を高めてもやわらかな感触を与えるために「スムージング成分」を配合しました。これに、輝きのある発色を叶える「パールセントピグメント(パール顔料)」を組み合わせ、カネボウ化粧品史上最高量※のパールを配合することに成功しました。容器との密着性が高くなりすぎると、アイシャドウの感触が悪くなってしまいます。3つの成分の比率の微調整を繰り返し、ついにベストだと思える比率にたどり着いたんです。
※カネボウ化粧品内、固形粉末化粧料において
手に取った時にときめきを感じてもらえたら。時代に合った商品づくりをこれからも
——商品が完成したときのお気持ちと、今後の抱負を聞かせてください。
3人一斉に:やっとできたー‼という気持ちでした。
石井(包装技術):完成したときは、まず安堵感でした。処方の煌めきと、紙の素材感で、素敵な商品に仕上がったと。それから、課題がでてくる度に不安になり、挑み続け、やっとできた!という達成感。プロジェクトメンバー一丸となって乗りきることができました。今後も「また一緒に商品開発に取り組みたい」と思ってもらえるように頑張ります。
佐々木(メイク研):商品を見て、素直に“可愛い”と思いました。正直、ずーっと不安を抱えていたのですが、やれることはすべてできたのではないかと思います。花王に入社して6年目で、こんなに大きな挑戦をしたのは初めてだったので、商品を世に出すことができて嬉しいです。初めてのことに挑戦する恐怖心がなくなりました。今後も挑戦していきたいです。
伊藤(商品開発):今できる最大限のことをやりきりました。この商品を手に取った時、使った時にワクワク感やときめきを感じていただけたら嬉しいです。世の中のトレンドは、日々変化しています。常にアンテナを張って、サステナブルへの関心も持ちながら、新しくおもしろい商品を絶え間なく創り出していきたいです。
編集後記
「ブライトフューチャーボックス」開発にかけた3人の想いを聞き、アイシャドウが一層煌めいて感じられました。商品を気に入っていただき、日常の生活の中でサステナブルな取り組みを実践するきっかけになれば嬉しいです。