花王・コーセー、そして多摩美術大学 ともに描く未来への想い
こんにちは、花王 公式note編集部です。
花王とコーセーは、2021年から企業の垣根を越えて、サステナビリティ領域で協働を進めています。今まで、使用済み容器から新しい容器をつくる化粧品プラスチック容器の「水平リサイクル」や絵具や印刷用インキへの「アップサイクル」を一緒に進めてきました。今回新たにアイカラーなどのメイクアップ化粧品から生まれた水性ボールペン「SminkArtペン(スミンクアートペン)」が完成。本年6月~10月に多摩美術大学のご協力のもとSminkArtペンを使ったデザインコンテストを開催しました。
今回は、このイベントを密着してきたのでレポートしたいと思います!
*SminkArtは株式会社モーンガータの登録商標です。株式会社モーンガータはコスメの中身をアップサイクルする事業を展開しています。SminkArtペン製造・販売元:株式会社モーンガータ。
花王とコーセーが協働。役目を終えたメイクアップ化粧品を、文房具にアップサイクル
まず「アップサイクル」についてちょっと説明を。アップサイクルとは“捨てられるはずのものを、新たな価値を持つ別のものに生まれ変わらせること”なんです。
担当の永井さんによると、メイクアップ化粧品を作るためには、目標通りの色の商品が出来上がるまでに、何度も色を細かく調整し、品質の確認などをするのですが、その過程の試作品は廃棄されていたそう。でも、こだわって創り出したモノだからこそ、廃棄してしまうのはもったいないと常々感じていて、それがこの取り組みのきっかけとなったとのこと。
もともとコーセーさんが協力していた、使われなくなってしまったメイクアップ化粧品を再生利用し、絵具や印刷インキなどの色材を製造・販売する株式会社モーンガータさん(以下モーンガータ)の取り組みに、花王も賛同し、協働がスタート。
試行錯誤を経て、メイクアップ化粧品をアップサイクルしたボールペン「SminkArtペン」がようやく24年の春に完成しました。今回の3色のボールペンには、花王とコーセーさんのメイクアップ化粧品が活用されています。
芸術を学ぶ学生さんに想いをつなぎ、初のデザインコンテストを開催
より幅広い人々の環境配慮や資源循環への関心を高められたら・・・・。また、今回のボールペンはメイクアップ化粧品のきれいな色、質感を生かしたものであることから、美と親和性の高い芸術や文化に関わる次世代向けのデザインコンテストの開催を検討していたところ、多摩美術大学さんが共感してくださり、SminkArtペンを使ったデザインコンテストを開催する運びに!花王・コーセー・多摩美術大学、そしてモーンガータさんも協力くださり、4方の想いが一致し、コンテスト開催に向けて動き出しました。
それぞれの作品に込められた想い
コンテストのテーマは「彩りがひらく、未来」。青・黄・ピンク3色のSminkArtペンのみで作品を制作してもらいました。続々とエントリー作品が届きましたが、創造力豊かな学生さんから生み出された作品はどれも美しい作品ばかり。審査員一同、悩みに悩み、議論を重ねた結果、1次審査を通過した20作品の中から、さらに最終審査に進む10作品が選ばれました。どれもたった3色のボールペンで描いたとは思えない素晴らしい作品です!
最終審査のプレゼンテーションで、学生のみなさんが語った作品に込めた想いとともに、紹介します。
「『Rainbow Stream』は、赤、青、黄の三色で「環境を良くする」という目標に向かう人々を表現しています。また、それぞれの色が交わると鮮やかな虹色が生み出されます。これらを活かし、虹色の風を新しい時代へ繋がるトンネルのように描きました。沢山の人が同じ意志をもって動くことでできる大きな風のトンネルが、鮮やかで輝かしい素敵な未来へ導くようなイメージで制作し、タイトルにもその願いを込めました。」
なるほど~。「Rainbow Stream」はきっとこれからいろんなところで起きていきそうですね!
「生き物の細胞は分裂や取り込みを通じて進化し、光も分かれたり混ざったりすることで新しい色や形を生み出します。この様子を「光の細胞」として描き、化粧品のインクのキラめきで光の乱反射を表現。細胞は全ての生き物が持つ共通のもので、持続可能な社会をめざすことは私たち自身と他の生き物のためであるという思いを込めました。」
化粧品のキラめきを活かして細胞を表現してくれたのですね!この細胞がどんどん広がっていくことがイメージできます。
「この夏、祖母を亡くし、その悲しみを受け入れられずにいました。棺の中で祖母に触れたとき、彼女の想いを感じ、心が温かくなりました。手を差し伸べてくれた人々との想い出を振り返り、心の彩りを広げるためには他者の想いが必要だと気づき、この思いを作品に描きました。」
作品からお祖母様との温かい思い出を感じ、優しい気持ちになりました。
「自然物を顔に塗りメイクをすることで自立した女性であることを表現するアイヌの文化と同じように、差別、環境問題、他者の目線などさまざまな不安がある社会の中でも、自立した自分、可愛い自分、かっこいい自分、美しい自分、それぞれ好きなように自分を表現することで、日常においてちょっとした勇気をもらうことができる。自分を彩ることで開く新しい未来の形を思いながら制作しました」
いろんな自分を認め、自分らしく未来を切り開いていこうという意思を感じます!
「“たくさんの色のカケラたちが見る人を未来へといざなう”というイメージを描いた作品です。未来そのものではなく、未来の一歩手前、“予感”というところに焦点を当てました。ラメの輝きを未来の「きらめき」として表現。さまざまな大きさの多角形を敷き詰め、未来に導かれるさまをグラデーションで表しています。光の先である中心には余白を作り、未知の世界への期待感を演出しています。見た人が、未来に想いを馳せる時のきらきらとした感情を思い出してくれるような作品をめざしました。」
未来への期待感を色彩や形で表現し、余白が想像力を刺激する素敵な作品です!
「メイクアップされた美しい女性と海や森、それぞれに住む動物たちを描きました。SminkArtペンは、持続可能な社会をめざした製品で、この取り組みは、私たちの地球の美しさを守ることに繋がっていると思います。本来捨てられてしまうはずのメイクアップ品がペンになることで、化粧品が人を美しく彩るだけでなく、未来の環境も彩り続けてくれるという点に魅力を感じました。このことを表現するために人の顔をメインに描き、そこから繋がるように自然や動物を描きました。」
人の顔と自然を融合させるアイディアが素敵!持続可能な社会への意識を高めてくれる作品ですね。
「私にとっての彩りがひらく未来とは、子どもの頃の私が思い描いていた未来です。彩りとは、心がはずむような胸のときめき。それを表現するために今回は、「忘れてしまっていた純粋な気持ちを思い出しながら、あの頃の私と未来の続きを紡いでいく情景」を描きました。胸の奥にしまっている大切な未来は、取り出して、大切に磨き上げて、もう一度まっすぐ見つめてみると、あの頃と変わらない輝きがそこにあるはずです。」
子ども時代の純粋さと未来への希望を繋げる素晴らしい表現で、心のときめきを再発見するというメッセージが印象的です。
「人種、性別関係なく、私たちの瞳に映る未来が彩りで溢れますようにと願いを込めて、点描で眼を描きました。印刷表現である「網点」は、色の重なり合いによってさまざまな色になることができます。本来規則正しいものである網点を手作業で描くことで、従来の考え方を壊したいという意味を込めました。1つ1つの点が人間だとしたら、多様性を尊重し、調和された社会はとても美しい未来をひらいてくれると信じています。」
多様性と調和を点描で表現し、手作業による色の重なりが、美しい未来への希望を強く伝えてくれています。
「SminkArtペンは持続可能な社会に向けた次世代への贈り物であると考え、自然の大切さを実感するため支持体は牛乳パックをリサイクルし自分で一から製造した紙を使用しました。SminkArtペンの元となっているアイカラーは花など自然由来のものからできているという事だったので、「希望」「発展」「成長」などの意味を持つ、サザンカ、ガーベラなどの植物で、私にとって未来の象徴である子どもの横顔を形作りました。また次世代にとどまらずその先まで未来が切り開かれることを表現するために植物の中に小さな子供のシルエットをいくつか描き込みました。」
牛乳パックの立体感が作品をさらに引き立てています。未来の象徴として子どものシルエットを描いているのも素敵です!
作品にこめられた想いを知ると、一層作品に愛着を感じ、吸い込まれるように作品に見入ってしまいます。
そして、グランプリを受賞したのはこちらの作品です!
この色のグラデーション伝わりますでしょうか?!たった3色のボールペンからこんなに彩り豊かな作品がうまれるなんて驚きです。色を重ねたら、どんどん強く、キレイになる、可能性のあるペンだと感じてくださったそう。蝶々の鱗粉を人に例えて、“1個1個の単位が重なり合って社会を創っていく”ということを表現したそうです。
「蝶々の羽の鱗粉は、拡大していくと1枚が1色の小さな小さな鱗が集まったモザイク画のようになっていて、独特で美しい模様を生み出しています。大きさや色の違うそのひとつひとつが重なり、時にぶつかることで、美しく独特な模様に成長する様子は、多様性が重視され始めた現在と共通する部分があるように感じます。SminkArtペンは違う色を重ねても色やラメがくすむ事がなく、私の表現したい色の重なりや遠目から見た時にキラキラと輝く蝶の羽を実現することが出来ました」
私たちの想像を遥かに超えて、学生さんたちは熱く深い想いを作品にこめてくれました。
みなさん本当に素晴らしいプレゼンテーションをしてくださり、会場にいた大人たちは、みーんな心が洗われたような表情になり、このコンテストを開催させていただけて本当によかったな、という気持ちでいっぱいになりました。もっともっと取り組みの輪を広げていけるように頑張らねば、と励まされたのでありました。
これからも企業の垣根を越え、できることを
最後に担当の永井さんと村松さんにも、感想をうかがいました。
永井さん:「未来を担う若い学生さんたちが想像以上にサステナビリティについて考えてくれていて感銘をうけました。」
村松さん:「メーカーである私たちも、もっと未来の地球について真剣に考えていかないといけない、とコンテストを通じて我々の今後の活動を鼓舞していただきました。」
これからも力を合わせてできることを一緒に、仲間を増やしながら積極的に取り組んでいきたと思います。
編集後記
アップサイクルの取り組みからデザインコンテストに発展し、学生さんから大きなパワーをいただきました。環境への思いが広がっただけでなく、コーセーさん、多摩美術大学さん、モーンガータさん、との絆も深まり、こうして、少しずつ輪が広がっていくんだな、と感じました。この記事を読んでくださった方が、環境に思いをはせ、何か一歩踏み出すきっかけになってくれたらとても嬉しいです!
おまけ♪