子どもたちに手洗いの大切さを伝えよう! 次世代を担う子どもたちに向けた教材を作り、社会の衛生につなげたい
子どもたちに、「上手な手洗いを楽しく学び、衛生的な習慣を身につけてほしい!」という想いから、2009年、花王の社員が学校に出向く「手洗い講座」の出張授業を始めました。そして2020年には、先生が自ら取り組んでいただけるよう、教材の無償提供を開始。現在、多くの小学校や、ろう学校、盲学校でご活用いただいています。
一人ひとりの意識が衛生的な社会をつくり、前向きな明日へとつながっていく——。そんな想いがつまったこの活動。
次世代を担う子どもたちに衛生的な習慣を身につけ、暮らしのなかで実践してもらうための活動を行っている事業ESG推進部で衛生プログラムの推進に携わる塩澤に、今回の教材制作に込めた想いを聞きました。
多くの子どもたちに手洗いの大切さを伝えたい。教材制作にトライ
——2019年から教材の制作に取りかかり、2020年には全国の小学校への提供を始めたとのことですが、なぜ従来の出張授業から、教材提供という形に変えたのでしょうか?
塩澤: 2009年から、社員が全国の小学校を訪れて、低学年を対象に手洗いの大切さを伝える「手洗い出張授業」を行なってきました。直接社員が出向くということで、大変ご好評いただいていたのですが、出張授業の形だと、年間100校ほど行くのがやっと。どうしても数が限られてしまいます。このプログラムを一人でも多くの子どもたちに体験してほしいと考え、学校の先生が自ら授業で実施していただける「教材提供」という形に切り替えました。
——最初の教材提供がスタートしたまさに2020年に、新型コロナウイルスが猛威をふるい始めました。感染拡大を受けて、2021年には刷新した教材をリリースしましたが、どのような点が変わったのでしょうか?
塩澤:“新しい衛生習慣”という観点から内容を刷新し、タイトルも「新・衛生習慣化プログラム みんなで手あらい」に変更しました。
自分の手を上手に洗うことが、家族や友だちなど、大切な人を守ることにつながっていくという意識を育むことをコンセプトに据えたのです。
最も苦労したのは、子どもたちにどんな言葉やストーリーで語れば、手洗いの大切さを理解し、“納得”してもらえるかという点です。
子どもたちは、日常的に親や先生から「手洗いをしましょう」と言われています。しかし、なぜしなければならないのか、しっかり理解し、“納得”しなければ、習慣化されないと考えました。
——そのために具体的にはどのような工夫をされましたか?
塩澤:現場の先生に何度もヒアリングをしました。例えば、イラストやアニメーション動画を採用して、子どもたちが楽しく学べること。一方的に説明をするのではなく、問いかけたり、考えたりしてもらいながら、理解を深められる教材にしました。
手洗いの大切さを理解してもらうために、ウイルスやばい菌の侵入経路を伝えるときは、「ウイルスやばい菌は、目・鼻・口から体の中に入ってくるよ。ついつい手で触ってしまうよね。だから、ハンドソープでしっかり手を洗うことが大切なんだよ」と説明し、子どもたちの“納得”を引き出します。
最後に、上手な手洗い方法を学ぶパートでは、手をすみずみまで洗うための“6つの手洗いポーズ”を取り入れた、ビオレuの「あわあわ手あらいのうた」をみんなで練習して盛り上がります(笑)。
——遊びのような要素も混ざっているのですね。
塩澤:そうなんです。なかでもいちばん人気があるのが、手洗い実習です。蛍光剤入りローションをまんべんなく手に塗ってから、ハンドソープで手洗いした後、ブラックライトが当たるボックスに手を入れてみると、洗い残した部分が白く光るんです。ワクワク体験ですね。子どもたちは、しっかり洗ったつもりでも洗い残しがあることに驚きます。
そして、マスク着用の重要性についても伝えています。先生から、子どもたちが「飛沫」という言葉を理解するのは難しいと聞いていたので、花王の研究員に監修してもらい、飛沫のことを「口から出た小さな水の粒」と表現して、子供たちにわかりやすく伝える工夫もしています。
特別支援学校(ろう学校・盲学校)の教材ができるまで
——「ろう学校」「盲学校」向けの教材も提供されていますが、こうした特別支援学校へも活動を広げることにしたのはどんな想いからですか?
塩澤:学校を訪問し、学校生活を送っている子どもたちの姿や、先生がマンツーマンで授業なさっている姿を目の当たりにして、自分がお役立ちできることは何なのかと強く想いました。
——そして、まずは2021年9月に「みんなで手あらい ろう学校向け」が誕生しました。
塩澤: ろう学校向け教材の制作にあたっては、聴覚障がいを持つ花王グループ社員を中心とした社内コミュニティ「KAKEHASHI(かけはし)」のメンバーのメンバーの協力を得ました。
メンバーに、繋がりのあるろう学校を紹介してもらい、多くの先生のご協力を得ることができました。教材制作にあたっての検証授業では、講師を務めてくれたメンバーもいます。手をすみずみまで洗うための「あわあわ手あらいのうた」にある、“6つの手あらいポーズ”の説明に、手話の「指文字」を採用したのは、「KAKEHASHI」のメンバーのアイデアです。そのほか、動画教材に字幕を加えるなど、さまざまな工夫を施しました。
——つい先頃、2022年9月には、「みんなで手あらい 盲学校向け」の提供も始まりました。
塩澤:盲学校向けの教材には、弱視の子どもたちが見えやすいよう、反転文字やシンプルなイラストを採用しました。また、全盲の子どもたちにも伝わるよう、セリフやナレーション、効果音が入った動画教材を制作しました。
洗い残ししやすい箇所に液体ゴムを塗った手袋教材も制作しました。学校を訪問し、手洗いしている子どもたちの一生懸命な姿を見て、どうしたらこの子たちに洗い残ししやすい箇所を伝えられるだろうかと考えていたときに、部内メンバーから「触ってわかるような手袋をつけてもらうのがいいのではないか」とヒントをもらったのです。
この手袋教材は、社員ボランティアを募って制作しましたが、なんと150人の応募があり、社員の社会の役に立ちたいという想いが感じられ、嬉しい気持ちになりました。社員を巻き込むことは、みんなで取り組むための第一歩かなと思っています。
教材提供を始めてから感じたやりがいと今後に向けて
——「新・衛生習慣化プログラム みんなで手あらい」の教材提供を始めてから感じたやりがいと、今後の抱負を教えてください。
塩澤:多くの先生方から、授業のご報告とともに、お礼の言葉をいただいています。「毎日の生活で実践できる、生きる力を養う教材ですね」と言っていただいたことは、特に嬉しかったですね。先日、盲学校での授業を見学してきましたが、授業が始まるやいなや、児童が拍手していたんです。それだけ楽しみにしてくれていたんですね。楽しい時間の中で自然に大切なことが身につけられるような教材をめざしてきたので、本当に嬉しかったです!
感染症への危機を乗り越えて、社会活動を継続していくためには、社会全体で取り組むことが大切だと考えています。教材の提供を、小学校にとどまらず、ろう学校や盲学校にまで拡大したのは、そのためでもあります。今後は、他の企業や自治体などとの連携をより深めて、皆さんと一緒に、社会の衛生につなげるためにも活動していきたいと思っています。
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