「リーゼ 聞けばわかるヘアスタイリング」音声コンテンツ制作にかけた想いに迫る!
リーゼは「できる、叶える♪リーゼ」をブランドスローガンに掲げ、誰でも簡単になりたいヘアスタイルに近づける商品をラインアップ。1980年の発売以来、時代のニーズに応えた提案で支持されているヘアスタイリングブランドです。
この「誰でも簡単」を実現するため、2021年4月に、視覚に障がいがある方でもキレイにヘアスタイリングできる「リーゼ 聞けばわかるヘアスタイリング」をリリース。ブランドサイトに、12種類のヘアスタイルを音声で紹介するコンテンツを掲載しています。聞くだけで自然と手が動く!スタイリングが苦手な方も、リズムに乗って楽しくスタイリングできる内容です。
どのようにして誕生したのか、発案者であるコミュニケーション作成部の兼重に、秘めた想いを語ってもらいました。
視覚障がい者の伯母との思い出が、音声コンテンツ制作のヒントに
——音声コンテンツ制作のきっかけは何だったのですか?
兼重:ヘアスタイリングの情報をどう伝えればよいのか悩んでいたときのこと。ふと、子ども頃見た伯母の姿を思い出したのです。伯母は、視覚障がい者でした。おしゃれが好きな人で、いつも身だしなみを整えていました。私は子ども心に、「自分では見えないのに、どうやってキレイにしているのだろう」と素朴な疑問を抱いていました。
伯母がどのように情報を得ていたのかはわかりません。しかし当時を振り返るうちに、「ビジュアルに頼った広告では、すべての方に伝わるというわけではない」という当たり前のことに気づいたのです。そこで、音声コンテンツの制作を提案しました。
多くの方にアクセスしやすいオンラインでの音声コンテンツにしたことは、おそらく他社にはない取り組みです。リーゼの「誰でも簡単に」というブランドパーパスとも合致すると思いました。
ヒアリングをとおして、耳から認識できる情報の不足を痛感
——視覚障がい者ライフサポート機構“viwa”と協働したそうですね。
兼重:目が見える私たちには、視覚に障がいがある方が求めていることの全てがわかりません。そこで紹介を受けたのが、視覚障がい者ライフサポート機構“viwa”です。「花王さんが興味を持ってくれたことがうれしい。口にしづらいこともあるだろうけれど、遠慮なく聞いて」と言ってくださり、ありがたかったです。まず、日々の生活で感じていることからうかがいました。
——ヒアリングでは、どんな発見がありましたか?
兼重:印象的だったのは、「私たちは視覚障がい者であり、同時に情報障がい者でもあるんです」のひと言です。たとえばお店に行ったとき。容器の形状や色がわからないために、店員さんに探してもらっても、お目当ての商品が見つからないことがあるそうです。世の中の情報は「目で見る」ことに頼りがち。耳からの情報が不足していることを改めて痛感しました。
一方で、見えない=不自由ではないことも知りました。人に頼ることで、できることの範囲が広がるのです。生活は、見えている私たちと何ら変わりません。ただ、近距離で人にサポートしてもらうこともよくあるため、身だしなみにはとくに気を遣うそうです。
——ヘアスタイリングに関しては、どんな意見が出ましたか?
兼重:清潔感重視で、寝ぐせの直し方を知りたいというリクエストや、おしゃれができる、トレンドの髪型について知りたいという意見が出ました。みなさん、「くるりんぱヘア」はご存じです。ただ、どうつくればいいのかわからない。何より、その髪型でどんな印象になるのか、どんな場面に適しているのかがわからないとのことでした。髪型ひとつとっても、耳からの情報が足りていないことがわかります。
音声だけで伝わる表現とは?試行錯誤を繰り返した制作期間
——制作にあたって、大切にしたことは?
兼重:めざしたのは、聞いただけでプロセスを理解でき、キレイに仕上げられること。12種類のうち、いちばん難しかったのは、「おだんごヘアの作り方」です。ポニーテールにして、ぐるぐるとねじり上げるところまではいいのですが、ヘアピンのとめかたがうまく伝わらなくて。時計の短針にたとえる「クロックポジション」という手法を採用し、「2時、4時、8時、10時の順に」と表現することで、ようやくOKサインが出ました。
また、キレイに仕上がった合図をどう表現するのかも苦労した点です。「凹凸がなくなめらかになれば」「髪の根元付近に引き締まる感覚があれば」としましたが、正直、自信のないところはたくさんあります。ただ、viwaの方々は「すべての人が理解できなくてもいい。わからないことは人に聞くから、とにかく情報があることが大事」とおっしゃっていました。10人いたら10人にわかる情報を届けようと必死になっていたので、ふっと肩の力が抜けました。
——試行錯誤を重ねたのですね。
兼重:わかりにくいと指摘されたところは何度も書き直しました。「くるりんぱヘア」の音声を初めて聞いた人が、一発で成功したのを見たときは、涙が出るほどうれしかったです。
予想外に大きかった反響に感じたやりがいと手応え
——完成後は、どんな反響がありましたか?
兼重: “viwa”さんには、「キレイにスタイリングできた」「ナレーションが頭に入ってきやすく、どの商品を、どのくらいの量、どこに使えばいいのかわかった」「こんなに簡単にできるなら、今まで挑戦してこなかったヘアスタイルもやってみたい!」と喜びの声をたくさんいただきました。
——ラジオの反響も大きかったとか!
兼重:J-WAVEの朝9時半の天気予報で、ラジオCMを流しました。視覚に障がいがある方は天候によって行動が大きく左右されるので、天気予報を聴いている方が多いからです。
ラジオ会員向けアンケートには、なんと1672件もの回答が!「視覚に障がいがある方にも髪のアレンジを楽しんでもらえるのがよい」「音声でヘアスタイルを伝えるというコンセプトが素晴らしい」など、局の方も驚くほどの大きな反響でした。
また、視覚障がい者ではない方からも、「音声を聞きながらやったら、できそう!」といった声もいただきました。ヘアスタイリングが苦手な方にも理解していただけるのではないかと期待していたので、うれしかったですね。
音声コンテンツの経験が、「キュレル」のアクセシビリティ動画へと進化
——今後はどんな夢がありますか?
兼重:今はリーゼを離れ、乾燥性敏感肌を考えた化粧品「キュレル」を担当しているのですが、このときの経験を活かして、あらゆる方々が簡単に理解できて、手軽にスキンケアをしていただくための動画「みんなのスキンケアメソッド」も制作しました。
日々、担当しているのは、商品のプロモーション戦略ですが、果たしてそれだけでいいのかなという想いが常にあります。だから、商品の機能を伝えるだけでなく、必要としている方に生活の中できちんと役立つ情報をつくって届けていきたいです。
コンテンツの存在が多くの方に伝わり、少しでも前向きになれるお手伝いができたらと思っています。
編集後記
「音声によるヘアスタイリング情報の提供」という今までにない挑戦には、コピーライターとしての気づきや、「誰でも簡単」への試行錯誤があったことを知り、反響からもこのコンテンツの意義を強く感じました。
「聞けばわかるヘアスタイリング」との出会いをきっかけに、音声コンテンツならではの魅力、ヘアスタイリングがうまくできる喜びや楽しさを感じてくださったらうれしいです!
◆花王公式YouTubeでは、PR担当が「リーゼ 聞けばわかるヘアスタイリング」を実践!
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