働く人をラクに、利用者を快適に。花王の業務品でのモノづくり
花王には業務用の商品があることを知っていますか。皆さんがよく利用される、飲食店、ホテルや旅館、温泉施設など、BtoBでプロ向けの商品を扱うグループ会社があります。その名も「花王プロフェッショナル・サービス」。働く人の負担を減らし、利用する皆さんに快適に過ごしてもらえる空間を提供したい!そんな縁の下の力持ちのような存在です。今回は花王の業務品のモノづくりについて、花王プロフェッショナル・サービスの木﨑さんに話を聞きました。
飲食店・宿泊施設・病院…あらゆるプロフェッショナルな現場で役立つ商品を届ける会社
——いきなりですが、花王プロフェッショナル・サービスってどんな会社なのでしょうか?
木﨑:私たちは業務品、いわゆるBtoB向けの商品をつくって届ける会社です。飲食店や宿泊施設、病院・介護施設などが抱える衛生課題から、そこで働く人と、その施設を利用される方々へのお役立ちを考えてモノづくりをしています。
木﨑:実は、就職活動の前までは、花王プロフェッショナル・サービスは知りませんでした。大学院で味覚関連の研究をするなかで、食に関わる衛生環境づくりに携われそうと興味を持ちました。花王の強みを活せることへの期待もありました。入社以降は、モノづくりをおこなう商品の企画開発やマーケティング業務をしていて、「トイレマジックリン業務用」「クイックルワイパー ワイド」など、さまざまな施設の浴室やトイレ、フロアに使う衛生商品を担当しています。
——花王との違いはあるのでしょうか?
木﨑:業務品も家庭品と同じく、主に和歌山県にある花王の研究所で研究開発をしています。ほかにも、香りに関わる感覚科学研究所、容器開発をする包装技術研究所、生産部門など、花王グループ内で連携しながらモノづくりをしています。花王とは、もっと離れた存在なのかと想像していましたが、実際は密に繋がっています。ちなみに本社は、花王のすみだ事業場敷地内(東京都墨田区)にあるんですよ。
違うところといえば、商品使用者が”働く人“というところ。外食チェーンの厨房、宿泊施設、介護施設などのプロの現場で、衛生にかかわる課題や改善点を見つけて、モノづくりに反映させます。
人手不足や作業負担の軽減など、現場の課題解決につながる商品開発を担当
——業務品と言えば大容量品!?というイメージもありますが…
木﨑:私たちのグループでは「バスマジックリン業務用」や「トイレマジックリン業務用」といった、一般家庭向けブランドの業務用も扱っています。ただ、プロの現場は一般家庭と異なり、利用者が多く汚れやすかったり、清掃する範囲が広い、従業員の人手不足や労務負荷への配慮が必要など、特有の課題があります。それもあって、働く人の課題解決につながる商品開発が求められています。現場を訪問し、実際の清掃風景を見せてもらったり、実際清掃される方とお話をすることで新たな課題がみえてくる事もあるので、そこでの会話をとても大切にしています。
——具体的にはどんな現場課題があったのでしょうか?
木﨑:ホテルの清掃現場訪問の際に、複数名いた経験の浅い清掃担当者が、仕事が辛いために何人も退職してしまい困っていた、という話を聞きました。ホテルで働く人には、もっとお客さまへのおもてなしに向き合ってもらいたい、私たちの商品で少しでも負担を軽くすることができないか、そう考えて宿泊施設向けの浴場・浴室の新しい洗剤の開発に取り組んできました。
2023年、新清掃オペレーションで現場負担を軽減!
木﨑:2023年、現場課題にこたえるブランドとして「楽ナビ」シリーズを立ち上げました。「大浴場クリーナー」「大浴場クリーナー専用フォームスプレッダー」「ユニットバスクリーナー」を発売前の2021年から担当しています。私たちにとって、同時に3品もの新製品を発売はすることは稀なことでした。そんな重要な仕事を任せてもらえる嬉しさ、その期待に応えたいと思う一方で、大きなプレッシャーがありました。
——それぞれどんな特長でしょうか?
木﨑:「大浴場クリーナー」は、散布後に約10分放置して流すという商品で、面倒で大変なブラシのこすり洗いが必要ありません。「専用フォームスプレッダー」で泡状に噴射すると、効率的に清掃できます。「ユニットバスクリーナー」は、浴槽にスプレーした後、タオルで汚れを拭き取るだけで、スポンジを使ったこすり洗いや、洗剤のすすぎが不要になります。
大浴場もユニットバスも、宿泊施設の清掃は、担当者の負担が大きいですし、今宿泊業界では人手不足でお困りという声を聞きます。重労働かつ時間のかかる清掃工程そのものを変える提案が必要なのです。大浴場クリーナーはこすらず流すだけ、ユニットバスクリーナーは浴槽にスプレーをしてからタオルで拭くだけ、という清掃負担軽減を考えました。
——成分設計に苦戦されたと聞きました
木崎:「大浴場クリーナー」の商品化に向けたホテルでの最終テストのときに、想定外の課題が見つかりました。安心して使っていただくために、配合成分の設計から見直しを判断しました。遠方の施設まで研究員と一緒に何度も訪問し、追加テストを行いました。生産準備や商談用資料の作成などやるべきことがたくさんありましたが、研究や生産、販売部門、グループのメンバーにも助けてもらいながら、なんとか無事3品同時発売をすることができました。
——発売後の反響はどうでしょうか。
木崎:「清掃が楽になった」「時間に追われない清掃につながった」といった声がありました。また、ご年配の清掃担当者の負担が緩和されたとか、短縮された時間を他の業務に充てることができた、少ない人数で清掃にあたれる、など働きやすさにも繋がっていることは嬉しかったです。今は次なる課題解決に向けて、現場のリサーチを行っています!
採用された施設からの声
——普段どのような清掃をされていますか?
松井さん:杉乃井ホテルは、大分県別府市にある温泉リゾートで、大展望露天風呂「棚湯」や、天空の露天風呂「宙湯」が自慢です!お客さまが使用される場所の衛生面へは気を配っています。「宙湯」には男湯と女湯、各5つの浴槽があり、清掃経験が豊富な2名が担当します。日常的に行う浴槽の清掃は、浴槽水を抜いてから、重くて大きなポリッシャーや高圧洗浄機という清掃機器と洗剤を使用した後に次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒し、洗い流して再度お湯をためます。浴槽の大きさにもよりますが、ここまでで約2時間半~3時間かかっていました。「楽ナビ」導入後は、ポリッシャーや高圧洗浄機を使わず清掃できるので、浴槽の清掃時間は約半分になりました。
洗面台裏、椅子、桶などお客さまが触れる細かい部分を、より丁寧に清掃できる時間が生まれました。温泉・プールはやはり衛生面が重要だと思っています。お客さまに安心な施設を提供できること、営業開始時間を意識して時間に追われることがなく細かい部分までより丁寧な清掃ができることも嬉しいことです。
編集後記
まだお見せしきれていない花王をもっと知って頂きたくて、業務品のビジネスをご紹介しました。業務品が使われる清掃現場は千差万別。幾度となく足を運んできた木﨑さんでも、毎回驚きと発見があるそうです。これこそ現場起点のモノづくりであり、花王のスピリットです!!