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「ヘルシア」ブランドの想いを、キリンさんへつなぐ

7月31日を最後に、花王は茶カテキン飲料「ヘルシア」事業をキリンさんへ譲渡します。「ヘルシア」は、茶系トクホ飲料がこれほど普及していない2003年に誕生。現在までおよそ31億本出荷※しました。みなさんにご愛飲いただけたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。
 “事業譲渡”と聞くと、企業と企業とのビジネスの側面が強く感じられるかもしれません。ただ、私たち社員が、大事に育て、注いできた情熱は最後まで絶えることなく、キリンさんに引き継ぎたい。今そんな想いです。花王で最後のバトンを受け継いだ、「ヘルシア」ブランド責任者の柳田雄一に話を聞きました。
※ 花王累計出荷本数(期間:2003年5月~2023年12月まで)



”トクホのお茶”普及に貢献!「ヘルシア」20年の歩み

最後のバトンを渡すのは、柳田雄一ブランドマネジャー

<プロフィール>
柳田 雄一(やなぎだ・ゆういち)
花王株式会社 ヘルス&ウェルネス事業部 ヘルシアブランドマネジャー
2005年花王入社。人財開発担当として、本社、国内工場やアジアリージョンへの駐在を経て、2016年よりコンシューマープロダクツ事業部門で、食品飲料やサニタリーなどのマーケティングを担当。2022年4月より現職。

——「ヘルシア」は花王にとってどんなブランドでしょうか?

柳田:「ヘルシア」は、2003年に、体脂肪を訴求するお茶として、初めての特定保健用食品として誕生し、市場を創ってきました。花王にとっては、健康事業を確立したブランド。モノづくりはもちろん、トクホの申請手続きを含めた業界の慣習、マーケティング手法、売り場など、何をするにも日用品とはまったく違う世界。そんな挑戦をスタートさせ、約20年も続けてこられたこと、飲んでくれたみなさんへの感謝とともに、先輩社員の覚悟と実践をリスペクトしています!

——どんな想いで育ててきたブランドですか?

柳田:「ヘルシア」という名前の由来にある通り、健康というゴールを決める人をアシストする “ヘルシーアシスト”という想いがあります。身近なお茶を通じて、内臓脂肪に悩む人の健康的なライフスタイルに繋げたいと願い、実に約10年の研究開発を経て誕生したのが「ヘルシア緑茶」。急須で入れたお茶の約5杯分にあたる、高濃度茶カテキン(茶カテキン540mg)を配合。「体脂肪が気になる方に適している」という他にはないお茶でした。

歴代のヘルシア緑茶。同じように見えて実は許可表示は進化している

柳田:茶カテキンの機能はそのままに、気分転換や運動時におすすめの炭酸やスポーツドリンクの発売、まろやかな味わいの緑茶を発売するなど、飲んでくれる人の様々な生活シーンを考えた技術開発と、新たな提案を続けてきました。
「ヘルシアがいてくれてよかった」とか、「パートナーのような存在」という、飲んでくれた皆さんの声を聞くたび、お役立ちできているという実感がありました。生活者一人ひとりの人生に、良い影響をもたらす存在となれていることを誇りに思っています。「ヘルシア」は「本当に困っている人に寄り添ってくれるブランド」だと感じています。

その時々の生活者のニーズに合わせ、コーヒーや紅茶といった様々な飲料を発売してきたヘルシア



前年にはリブランディングも実施。激戦のトクホ茶市場で生き残るために

——「ヘルシア」のブランド責任者になって大切にしたことは?

柳田:健康維持を訴求した商品は、飲料に限らず、サプリメントや健康食品がひしめき合い、トクホ茶市場は激戦でした。ヘルシアは残念ながら、発売当初のユニーク性は失われている実感があり、積み上げてきた価値を守りながらも、環境変化への対応が急務でした。
 
そこで、コロナ禍ではありましたが、マーケティングメンバーだけでなく、販売、研究、サプライチェーンマネジメント、商品開発など、事業にかかわる仲間との“対面での対話”を重ねました。嬉しかったのは、現場の営業担当者から「こんなに腹を割って話せるマーケティングチームははじめて」と、伝えてくれたこと。厳しい事業環境だからこそ、こうやって、チームとしての前向きなエネルギーを高めること、まずはこれに着手しました。

——そして昨年はリブランディングがありました。

柳田:ブランド誕生から20年。内臓脂肪を減らすのを助けるという“機能価値”をコミュニケーションの中心に据えてきました。でも実際は、内臓脂肪を減らすほどの健康行動を継続するのは、かなりハードルが高いことです。なかなか続けられないというのが現実。
 
そこで食事や運動など、身近なことでも、健康行動を実践する人を「ヘルシア」が励まして、応援する存在になるために、リブランディングを実施。寄り添い型へ大きくシフトさせました。例えば、生活者の健康行動シーンに寄り沿って、毎日のちょっとした運動を応援するメッセージや、コンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」とのコラボなどによって、飲んでくれる人が増えたという成果が見えた時には、事業関係者みんなで喜びました。



ブランドを手放す決断を受け入れたとき

——「ヘルシア」ブランド譲渡の決定。どのような想いでしたか?

柳田:最初に聞いたときは、会社としてブランドを手放すという決断は、すぐに受け入れられるものではなかったです。そのため、経営層には自分の正直な想いも直接伝えていました。

でも、キリンさんでよかった。キリンさんとは2022年から内臓脂肪と免疫に関する共同研究をしていたし、翌年には「キリン iMUSE」と共創した「ヘルシア緑茶プラス 免疫ケア」の発売の仕事を通じて信頼関係ができていたと思います。お客さまを一番に考えるという姿勢は両社共通。いつしか、信頼できる共創パートナーになっていきました。

柳田:会社としてもヘルスサイエンス領域を強化されているので、今後も長く愛されるブランドとして育てて頂けると確信しました。会社は変わっても、ブランドが生き残るのは嬉しいこと。ヘルシアを愛して下さっているお客さまがいる限り、ブランドの価値や想いを、しっかり引継ぎたい。7月31日の最終日まで、メンバー一同ブランド価値を高める活動を続け、キリンさんにこのバトンを渡そうと決意しました。

ブランド価値を高める活動を続けキリンさんにバトンを渡そう



キリンさんの想い

——そしていよいよ想いのバトンはキリンさんへ・・・・

キリンビバレッジ株式会社 マーケティング部 ブランドマネジャー 増田さん

<プロフィール>
増田 健志(ますだ・けんじ)さん
プラズマ乳酸菌を活用した「キリン おいしい免疫ケア」シリーズや、「iMUSE」など、ヘルスサイエンスケア領域のブランド責任者として中長期のプロダクト開発などを担う。

——ヘルシアブランドの印象は?

増田さん:このお話が出る前は、トクホの健康茶系飲料の市場を作ってきた存在であり、競合ブランドの一つという存在。ヘルシアを改めて知ると、20年以上愛されてきたということは、愛飲していただけるお客さまとの信頼のもと成り立ってきたブランドなんだと感じました。すごいブランドだと思ったのが率直なところです。

——ヘルシアがキリンさんに譲渡されると聞いた時、どう感じましたか?

増田さん:2月1日のブランド譲渡発表当日にこの話を聞いて、自分はこれからどのようなことをするのか想像がつきませんでした。キリンビバレッジとして事業を譲り受けるというのは初めてでした。
一方で、長年マーケティングの仕事をしてきましたから、一つ一つ愛情を注ぎ育てたブランドを譲渡する、花王さんの担当者の気持ちは考えさせられるものがありました。また同時にブランドを受け取る私たちの責任の重さを感じましたね。

増田さん:事業譲渡というと、殺伐としていることを想像していました。でも、花王さんの担当者は、「もう関係ない」という雰囲気はなく、最後までできる事をしてキリンにブランドを渡したい、という前向きさが感じられました。

そして何より「お客様のためになることをやろう」という姿勢は両社共通でした。譲渡があることで、お客様には心配や迷惑をかけたくない。それだけに、手法や表現のところでは、お互いのこだわりに折り合いをつけることが必要なこともありましたよね。


——私たちの想いのバトン、ちょっと重たかったかもしれません

増田さん:重いというか、アツいバトンだなと感じます。今後に向けては、ヘルスサイエンス事業を強化するなかで、ヘルシアを迎え入れ、キリンブランドとしての強みと、ヘルシアブランドをうまくかけあわせて、お客さまに新しい価値を届けていきたいと考えています。



編集後記

「一人でも多くの人が、ヘルシアブランドに関わることができてよかったと思ってもらえるように、最後まで尽力したい」。譲渡発表後の柳田さんの言葉が忘れられません。飲用くださったみなさん、一緒に育ててくださった関係のみなさん、たくさんの方に支えて頂いたブランドでした。本当にありがとうございました。私たちの想いが最後のバトンに託されました。たしかにちょっとアツいですね。
キリンさん、これから「ヘルシア」をどうぞよろしくお願いします。



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