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生活者に寄り添って90年。歴史ある部署の使命と新たな想い

暮らしに寄り添い、生活者と花王をつなぐ「生活者コミュニケーションセンター(生活者CC)」。電話、メール、手紙などで寄せられる相談は、年間17万件を超えます。約90年という歴史があるこの部署がめざすのは、期待を超える対応で「ご相談を“感動体験”にかえる」こと。今回は、野村由紀センター長に、大切にしている価値観や、新たな挑戦について聞きました。


“背景”までじっくり聞きこむ。めざすのは、相談を感動体験にかえること

<プロフィール>
野村 由紀(のむら・ゆき)
1990年入社
生活者コミュニケーションセンター センター長

生活者CCの前身となる花王生活科学研究所に入社。1993年よりファブリックケア・ヘアケア・入浴剤などのマーケティングを担当し、2012年から衣料用洗剤のブランドマネジャーを務める。2021年から生活者CC 商品コミュニケーション部長を経て、2023年1月より現職。「私たちの活動は、相談対応の“現場”が起点。現場の感覚が大事なので、私も含めて皆が相談窓口に入っています」

――年間17万件も相談が寄せられるのですね。

野村:相談件数が多いのは、商品数が多いのもありますが、電話やメールなど、広く窓口を公開しているからだと思います。これは「生活者の声を大事にして、背景まできちんと聞いていく」という会社の姿勢です。花王の特徴は、相談の背景までしっかり聞き込み、お客様が満足のいく対応をしたいという思いとともに、その声を事業活動や企業活動に活用しようという狙いがあります。

2022年の相談件数
(出典:花王生活者コミュニケーションセンター活動報告書2023)

例えば、「以前買った日やけ止めが出てきたけど、使えますか?」と聞かれたとき、「使えます」と答えて終わるのではなく、「何か気になることがございましたか?」などと、その背景をお尋ねします。外出機会が増えたので日やけ止めを使いたいとか、物価が高くなっているので、多少古くても使えるなら使いたいという生活防衛の気持ちなど、いろいろなことが分かってきます。背景を聞きこむことは、花王の相談対応の「文化」だと言えます。

生活者の声は、製品の開発や改良、サービスの向上につなげています。私たちは毎月、事業・研究・生産など各部門の担当から責任者までが集まる会議で、生活者からのご指摘を伝え、生活者の視点でのモノづくりの提案をしています。花王では「よきモノづくり」と呼んでいる取り組みの一環です。

――「ご指摘」という表現を使われるのですね。

一般的には「クレーム」と言うのかもしれませんが、花王では昔からクレームという言葉は使っていません。クレームと言うと「処理しておしまい」となりますが、ご指摘と言うと、ポジティブな感情で「迅速、正確、親切な対応」につながります。

また、花王は伝統的に「ご指摘」の範囲を広く、厳しくとります。「ケープはどこに売っていますか」というお電話に、「ここで売っています」と答えて終われば「問い合わせ」です。でも、背景をお尋ねして、「近所のどの店でも売っていない」と言われたら、入手困難のご指摘です。配荷の課題も見えてきます。頂戴した情報を「よきモノづくり」に反映させていく目的があるので、ご指摘が多くても恥ずかしいことではないです。



「Yahoo!知恵袋」のお悩みにも、社員が積極的に回答

――時代に合わせて、相談窓口も変わっているそうですね。

野村:2017年には年間23万件のご相談がありました。ここ数年で減少しているのは、「お問い合わせ」です。スマホを皆が見る現在、簡単な問合せごとは自分で検索して解決したい人が増えています。こういった背景の中、「製品Q&Ahttps://www.kao.com/jp/qa/」というサイトを充実させ、生活者の自己解決に向けた情報発信に力を入れてきたからだと考えています。家庭用品と化粧品を合わせて約1650個のQ&Aを公開しています。年間460万UU(ユニークユーザー)のアクセスがあり、5年前の約2倍に伸びています。

ほかにも、2015年からは「Yahoo!知恵袋」で生活者が投稿したお悩みに回答する活動もしています。これまで約9000件に回答し、2022年の年間の閲覧数は355万でした。



生活者の「リアルボイス」がモノづくりの現場を動かす

――生活者の声から生まれた商品や、改良された事例はありますか。

野村:いろいろあるのですが、例えば、アタック ZEROの買い間違えを防ぐデザイン変更ですね。「レギュラー」と「ドラム式専用」のデザインの違いが分かりにくく、相談窓口に「アタック ZEROのつめかえ用を買ったけど、うっかりドラム式専用を買ってしまった」という買い間違えのご相談が毎日何件もあって…。私が2021年に事業部のアタック担当から生活者CCに異動したときだったので、肩身が狭かったです。「すぐに対応しよう」と事業部の担当にもお客様のお困りを相談の音声で聞いてもらいました。改良時にパッケージのデザインを工夫し、違いを分かりやすくしました。

また、「ロリエ 朝までブロック 安心ショーツ」はワンサイズ(M~L)展開でしたが、相談窓口に「いい商品だけど、私にはきついから大きなサイズがほしい」という声をたくさん頂戴し、「ゆったりLサイズ」を発売しました。ほかにも、化粧品の容器に「ガラス」の表示をするようになりました。ガラスは表示義務がありませんが、「使い終わった後の分別に困る」という声が寄せられていました。使うときだけでなく、捨てるときの分別も考えて表示を始めたのは、生活者CCの活動の成果だと思います。

――生活者の声を開発の担当者に届ける役割は大きいですね。

野村:はい。生活者CCのメンバーは、暮らしの中で商品がどう保管され、使われているのか、とても詳しいです。事業の担当者とは違った視点で、「生活者はこんな風に困っています」と、解決のためのアイデアも一緒に伝えることができます。

私たちの活力は、生活者の方々からの「ありがとう!」という言葉です。よい声を聞くと感動しますし、お困りの声からはいろいろなアイデアが広がります。そこで、事業部や研究所の担当者らを対象に、生活者の声を聞いてもらう「カスタマーリアルボイス研修」を始めました。ただ聞くだけでなく、「私たちにできることは何か」を考え、話し合ってもらっています。参加した社員からは、生活者を想い、ひらめきも生まれているようです



アバターで相談、AIで相談解析……時代に合わせて広がる挑戦

――生活者CCが大事にしている価値観は。

野村:生活者に寄り添うこと。お悩みや困りごとを解決することで、その人の暮らしが良くなり、未来も良くなり、笑顔あふれる暮らしに変わると思っています。家庭品のことで電話するなんて煩わしいことなのに、わざわざ連絡してくれた方は花王の「ファン」だと思います。ですから、ただ解決できるだけでなく、「電話をかけてよかった」と思ってもらえるような、期待を超える対応をしていきたいです。

生活者の声を社員にもっと届ける活動も始めました。ご指摘だけでなく、「使ってよかった」などのポジティブな声も積極的に届けるようになりました。嬉しい声を届けることで、会話も笑顔も増えるでしょうし、元気も出るはず。ほかにも、生活者CCの働き方改革や、パーパスを考えるプロジェクトを手上げ式で作っています。

――これから挑戦したいことはありますか。

野村:いっぱいあります。電話が苦手な世代に向けて、アバターで相談を受けるのはどうだろう?とか。メタバースでなら気軽に質問をしてくれるかもしれない。AIを使って相談の解析をしてみたら、新たな発見があるのでは?とか。生活者CCの起源は1934年に設立された「長瀬家事科学研究所」だったという歴史を考えても、「花王は生活者のことが分かっているね」と言われるような挑戦をしたいです。



編集後記

花王の生活者相談が積み重ねてきた約90年もの歴史、年間17万件という相談件数、460万UUのサイトアクセス数など、驚いてばかりでした。相談対応の窓口は、生活者との懸け橋なのだと改めて感じました。コロナを経て、カスタマーリアルボイス、働き方改革、新たなパーパスづくりなど、様々なプロジェクトが始動しているとのこと。また別の角度から、皆さんに生活者CCの活動をご紹介したいです。



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